おしっこをして、ズボンを履き、ベルトを締め、さぁいざ参る!
……といった所で、便意に襲われました。
さっきまでトイレにいたのに。
さっきまでおしっこをしていたのに。
それなのに、私はうんこをしたくなったのです。
空気が読めない奴です。
それならさっき一緒にやれば良かっただろ!? と、流石の温厚で仏なパネるさんでも怒り狂うレベルです。
天気は曇りですが、降水確率は0%。
絶好の散歩日和です。
なのに、奴は玄関を開けた瞬間に、叫んだんです。
「おい、俺も出るぞ」 と。
話相手が居なく、毎日孤独な日々を過ごす障害者。
あまりに余裕が無さすぎて、リアルにうんこに声をかけました。
「……出るのか!? さっき気配さえしなかったのに」
玄関で立ち止まり、オナラかどうかチェックします。
……どう考えても実です。オナラではありませんでした。
「……分かった。俺とお前との仲だ」
そう言って、私は靴を脱ぎ、ベルトを外し、ズボンを下ろし、便座に腰を下ろしました。
うん。うん。うん。
うんうんうんうん。
ウンッ!!!!!!!!!!!
ウンウンウンッツッツ!!!!!!!!!!!!
どう踏ん張ってもウンコが出ません。
「……話が違うじゃねーか!? メンヘラかてめぇ!?」
狭いトイレに、障害者の気持ち悪い声が響きます。
ウンッ!!!!!!!!!!!
ウンウンウンッツッツ!!!!!!!!!!!!
「……じゃあな」
私はお尻を拭き、彼に別れを告げました。
この日、外出する前から何かを成し遂げた感を手に入れた私は、いつもと違う行動をしました。
まず、キャベツともやし、パンその他を購入しました。
そして、いつもご飯とふりかけと味噌汁+αだった晩御飯を、キャベツともやしとウィンナーのコンソメスープに変更する事ができたんです。
素晴らしい事です。
当たり前で、変化の無い、居心地のいい環境と時間を、急変させる事ができたんです。
それもこれも、全部ウンコのお陰です。
彼が、朝に出なければ、玄関から一歩踏み出した時に声をかけてくれなかったら。
そして、結果無事にお別れを告げられなければ、このような良い変化とは出会えませんでした。
いつも当たり前にしている行動に、感謝をする。
当たり前の平和に、感動を受ける。
感受性を豊かに、できるだけアンテナを高くする。
日々の生活を変えなくても、意識を変えるだけで幸せを感じる事ができるんです。
さぁ、みなさんも私と一緒に、排泄物に声をかけてみましょう。
「オイ、出るのか!? 出ねぇのか!? このメンヘラが!」
彼は、彼女は、きっと感情を天から授かり、貴方に答えてくれる事でしょう。
神は、貴方の行動を逐一監視しているのです。
この世界の主人公は、自分だ。
自分を中心に時間は進んでいるんだ。
世界中から戦争が無くならないのは、そういった人類の奢りがあるからかもしれませんね(?) ~終~